今回はドッグフードの品質を表現する方法の一つとして散見される「ヒューマン・クォリティ」という言葉について書いてみようと思う。言葉の意味は「人間品質」ということで、まぁ、「人間も食べられる」もしくは「人間が食べられる品質の材料で作られている」という意味で使われているのだと思う。そして、この表現は、なかなか高価なプレミアムフードに使われていることが多いので、おそらくは「その他の商品に比べて優れた品質である」という印象を消費者に与えて、差別化する目的で使われているのだろう。もちろん、多くの人はそのように感じることでしょうし、言っていることが嘘だとは言い切れません。本当のところは知らないけど。。。
しかし、私はこの言葉にまったく逆の印象を持っています。全然「いい印象」ではないのです。むしろ「非常に悪い」。皆さんの中には、私と同じような印象をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
まず、犬の体は人間と比べて小さい。このことは皆さんが服用すべき薬の量が、基本的に体の大きさ(一般的には「体重」)に比例することを鑑みれば理解しやすいと思います。体の大きさに応じた量が必要なのであって、小さな体に大量の投与は危険だし、大きな体に少量の投与では効き目がないのです。
次に、人間が普段口にしている食べ物の品質はどうか。それが「かなりヤバい」ことは皆さんもよく耳にすることではないでしょうか。防腐剤、化学調味料をはじめ、生産時の農薬や飼料に含まれる抗生物質や成長促進剤。遺伝子組み換えが問題になることもありますね。もはや、もともと天然自然のものが天然自然のものではなくなっている。私たち人間の食生活は、そのような得体の知れない「なにものか」によって支えられているのです。
普段私たちが口にしているものの品質は「かなりヤバい」、それを大切な犬たちに与えよう、というのが、私が「ヒューマン・クォリティ」という言葉から受ける印象なのです。人間は体が大きいから、悪い症状が現れにくいんです。しかし、体の小さい動物にとってその量は致死量かもしれません。
タバコはいい例だと思います。人間は吸っても大した害はありませんが、小型の動物はその副流煙でいとも簡単に皮膚病になってしまうことがあります。食べ物は体内に入れますから、なおさらです。
随分前に、川で採ってきたヨシノボリを水槽で飼っていたことがあります。ものすごい大食漢なので、スーパーで買ってきた安い冷凍エビを解凍して小さく切って与えました。めちゃくちゃおいしそうに食べていました。私としてはこれでシメシメと思っていたのですが、事態は急転、悲劇が訪れます。翌朝には十数匹のヨシノボリはすべて死亡。私が「ヒューマン・クォリティ」の洗礼を浴びた瞬間でした。
そもそも、犬と人間は違う生き物です。だから「ヒューマン・クォリティ」かどうかは、はじめから尺度にはならないんです。人間を尺度に使った印象操作に、惑わされてはいけません。