犬は基本的に「家族」と居るだけで幸せなんだ、ということを理解してあげましょう。
ドッグランなどで他の犬と仲良くできる犬が「優秀」ということではありません。自分の家族とその他をキチンと区別できて警戒することは、犬本来の基本的な能力なのです。
犬は人間が初めて家畜化した動物と言われています。その関わりは今から約2万年前までさかのぼります。人に慣れやすく、他の動物を警戒し、危険が迫れば吠えて知らせ、場合によっては自ら撃退するし、狩猟の手伝いもする。
古来、犬は「家族を他者から守る」という重要な仕事を担ってきたのです。犬たちにはその性質が、DNAに深く刻み込まれているのです。その意味で、誰とでも(人でも犬でも)仲良くなれる子は、果たして「優秀」なのだろうか、とも思えてきます。もちろん犬とのかかわり方は現代では様相を変え、仲良くしてくれる方が観ていて楽しいのは確かなんですけど。
大切なことは、人間側の都合をあまりにも押し付けすぎないこと。犬が好きな犬もいれば嫌いな犬もいる。家族以外を受け入れない犬もいる。「それはそれでいいではないか」と認め、理解し、受け入れてあげる器を、私たちは持たなければいけない。その大きな器に犬が入ることで、犬は私たちの素晴らしき共同生活者たり得るのです。
これは決して放任するということではありません。共同生活を営むには、お互いに守らなければならないルールがあります。厳格なものもあれば、ケースバイケースで比較的ゆるいものもあるでしょう。たとえば、来客に対して、吠えてお出迎えすることは許すが、飼主が行って「もういいよ」と言えば治まらないといけない。ドッグランで他の犬を追いかけ、追いかけれられ、鼻でツンツンし合うことは許すが、手をかけたり、後ろからマウントしたり、足を狙って歯を当てたりするのはダメ、など。ルールは飼主自身が個々の犬の性質に合わせて決めるものです。そして大切なことは、決めたルールを飼主自身が徹底的に守りぬくこと。犬はその様子を学び、従うようになるのです。犬が私たちの器に入るとは、そういう意味なのです。