散歩のとき「引っ張らない」犬というのは、「引っ張り」を「しない」ということではなくて、「飼主と一緒に歩く」ということが「普通」「自然」「あたりまえ」というマインドでいられる、ということだと思います。散歩というのは「群れの移動」なので、リーダに付いていく必要がある。付いていかなければ、自分(犬)がヤバイことになることが分かっている、だから付いていく。
特に、和犬種はそういう傾向が強いような気がします。飼主(リーダ)の近くに居たい、そばに居ればきっといいことがあるから、という感じではありません。「期待」でもなく、「習慣」や「従う」という感じでもなくて、リーダはリーダ、私(犬)は私で勝手に歩くけど、私(犬)は私の意思でリーダに付いていく、、という感じです。リーダが歩いていて、その近くをリーダと一緒に歩いている。リーダと自分(犬)の進む方向が異なったり、自分が寄り道していて、はっと気が付いたらリーダが近くに居ないことが分かると、「オッといけねぇ」といった感じで付いてくる。決して「ピッタリ」横についてくるわけではないんです。それでも、基本的には常にリーダの位置を確認しているし、確認しようとしている。だって、そうしないと「ヤバい」ことになるから。(洋犬種はこれとはちょっと違うんだと思います。彼らの場合は「横を歩く」というのが「命令」であって、命令に従うことが仕事であって、仕事が楽しくて仕方がない。そんな感じだと思います。)
さて、そんな風に育てるには、普段から犬が「勝手に動ける」んだ、ということを習慣づけておくとよいと思います。犬自身のマインドと行動様式が、リードが付けられている時も、付けられていない時も、あまり変わらないようにする。一方、洋犬種の場合には、リードが付けられたとたん、そういうモードになるように仕込むことがあると思いますが、和犬種の場合は、そのように仕込もうとしても、あまりうまくいかないように感じます。
ロングリードを使うとよいと思います。まず「来い(Come)」を仕込みます。ロングリードをうまく使って、「来い」が確実にできるようになるまで反復練習しましょう。次に、ロングリードのままで、一緒に歩くようにします。リードが張りそうになったら、すぐに「来い」で呼び戻します。このときだけ、飼主は停止します。飼主が停止したら、何も言わなくても近くに戻ってくるようになることを目指すと良いでしょう。リードが張らない範囲内であれば犬は自由です。その代わり飼主は歩き続けて、犬との距離は常に変化します。初めのうちは、犬が、歩き続ける飼主を意識し続けられるように、声掛けをしたり、褒めたりしてあげます。うまくトレーニングが進めば、リードは「在って無いようなもの」に変ってきます。リードをいろいろな長さに変えても、できるようになることを目指します。犬が、その時使われているリードの長さを意識するようになれば、あら不思議、ショートリードでも引っ張らなくなります。そこで、ヒールポジションや、よそ見をしないでまっすぐ歩くことを、コマンドで入れていけば、きれいに歩けるようになることでしょう。
散歩は楽しくなければいけません。リーダーウォークに縛られて、犬と飼主が、散歩を楽しめなくなってしまっては、本末転倒です。
最後に。ロングリードは、相応の場所で使用しなければなりません。交通量の多いところで使ってはいけません。たとえ使用しても、犬は気が散ってしまって、トレーニングはうまくいかないだろうし、何より安全が確保できません。「いい場所」を見つけるのも、飼主の大切な仕事の1つなんです。