散歩は「群れの移動」である。したがって、移動中は群れからはぐれたりしないようにかなりきつい制約が課される。排便もクンクンもダメ。寄り道なんてもってのほかだ。しかし「移動」には必ず目的地ゴールがある。そこでは、それまでの厳しい拘束が解かれ、皆、自由に振る舞える。好きなように走り回り、クンクンして、充分に狙いを定めて排便する。飼主とボール遊びをしてもよいし、軽いおやつの時間にしてもよい。彼らにとってその時間は実に至福の時であるが、ほんの5分、10分で足りる。それで充分に満足する。逆に長すぎるのはよくない。人間の側が満足するまで遊んでいてはいけない。それでは長すぎる。その自由な時間の中に、己の本能を見つけてしまうことがあるからだ。ドッグランなどで遊び過ぎた犬が、帰りたがらなくなるのを見たことがある人もいるだろう。犬には、自由であり過ぎる危険よりも、信頼できるリーダと落ち着いて過ごす方を選ばせてあげよう。もちろん個体をよく見て、もっと長く遊ばせられそうであれば、少しずつ時間を延ばしてあげよう。そして時には、5分で切り上げる。長いときもあれば短いときもある。それは、飼主の一存だけで決められるものであり、犬はそれを強く理解していなければならない。
飼主が帰ると決めたとき、いつも「帰ろう」と言うとよい。うちへ「帰ろう」をコマンド化するのだ。すると、犬は自ら興奮度を下げ、帰路につくモードに入る。帰りはまた拘束。「群れの移動」である。
もしも犬が何かの都合で家から飛び出していなくなってしまったとき、「帰ろう」がコマンドとして入っていれば、外で大声で呼びかければ、犬は自ら帰ってくるかもしれない。そういう保険を兼ねて「帰ろう」のコマンド化を勧めたい。