散歩で、飼主の横か後ろを歩けるようになること、について。散歩中は何があるかわかりません。不意の事態に正確に対処するために大切なことなのでしょう。しかし私はそこまでは求めていません。
飼主が指示を出した時に、すぐにそのポジション(ヒールポジション)へ移れることが大切だと考えています。リードは、犬を引っ張るためのものではありません。まして、飼主が犬に引っ張られるためのものでもありません。リードは、飼主の意思を犬に伝えるための「糸」です。飼主と犬はこの糸1本で心をつなげています。
さて、リードアクションの基本は、手首のスナップだけです。方向は犬の上か横方向です。後ろへ引っ張る方向ではありません。「前に出るなよ」でチョン、「においをかぐなよ」でチョン、「吠えるなよ」でチョンです。腕全体で力任せに引っ張ると、いわゆる「ひっぱりぐせ」がついてしまい、この「チョン」に鋭敏な反応ができなくなってしまう恐れがあります。犬は体毛にそっと触れただけでも十分に反応できる感覚を持っています。ポイントは、必ず「事」が起こる ”前” に「チョン」することです。そのために飼主は、犬よりも先に「事」が起こることを予期できなければなりません。犬にとって散歩は「群れの移動」です。飼主は群れを統率し、道中の安全を確保する信頼できるリーダでなければなりません。当然、誰よりも早く危険を察知し、それらに対処できる力が求められます。要求は高いですが、飼主の「腕の見せ所」といってもよいでしょう。それでも前に出てしまったときは、おしり(しっぽの付け根の横あたり)を指先でチョコンとつつきます。犬はびっくりしてこちらを向きます。目があったら飼主は威厳ある態度で犬を静かに後ろへ下げます。大切なのは「後ろへ下がる」という「正解」を確実に教えてあげることです。
リードを引っ張って、強制制御することが必要な場合も多々あるでしょう。このとき大切なのは、それがあくまでも「一時的」なものであること。リードを引っ張り続けることで犬を引き戻すのはよくない。リードを引っ張るのは犬を ”停止” させるためだけです。必ず飼主は犬のところへ駆け寄り、犬と目を合わせて威厳をもって「No」、そして元居た場所まで連れてくる(正解を教える)のが正しい対処だと思います。もし犬だけの群れなら、リードを持っていない母犬やリーダー犬は、きっとそのように対処するでしょう。