散歩トレーニングの最終目標は、「飼主と一緒に歩く」ということを犬が理解することだと思います。「群れの移動」なのだから、その群れの一員が途中で道草を食っていてはいけないのです。外に出て晴れ晴れした気持ちはわかるけれど、いざ「移動!」となったら、うんこもおしっこもダメ、クンクンさえもダメです。一心にリーダーの後をついていかなければなりません。その代わり、その旅には必ずゴールがあって、そこに到着したら、拘束が解かれて自由にクンクン、そして排便。吠えても走り回ってもよし。要は「規律」「けじめ」が大切で、そういったことをルール化すべし。
一緒に歩くことが習慣化されると、犬がどこかへ行ってしまうということがなくなってきます。犬を自由にしていたとしても、時々飼主の様子を伺い、すこし移動しただけでも、敏感に察知してついてくるようになります。犬との距離が離れれば離れるほど、犬は飼主の様子を頻繁に確認するようになる。あー「群れ」なんだなぁ、と感じる瞬間です。犬はいつも飼主を見ている。信頼してついてきてくれる。もっともっと、しっかりしたリーダーにならねば、と思うようになります。
犬を自由にしていても、離れて行かないようにするには、何度かの「小さな失敗」が必要かもしれません。彼らは失敗から大きく学びます。トレーニングでは失敗させないことが大切なこともありますが、やはり人生と同じ、失敗から学ぶことは、犬を大きく変えてくれます。
たとえば、他の犬に挨拶なしに向かって行って怒られる、というのも小さな失敗の1つでしょう。このとき飼主が「いやねぇ、怖いワンちゃんねぇ!」などといって引き下がってしまうとトラウマになってしまう。場合によっては犬嫌いの犬になってしまう。それはあまりにもかわいそう。殺し合いの喧嘩になることもあり得るから介入のタイミングは非常に難しいのだけれど、犬同士の学びの場を奪ってはいけない。何事も経験なのである。信頼できる犬を相手にして教えてもらうのが得策。
犬と強固な信頼関係と主従関係が築けていれば、犬は本当に困ったとき、嫌なことに遭遇した時、飼主を頼ってきます。股の間に入る込んでくるかもしれない。そんな時は「それでいい」と思って静かに受け入れてあげればいい。失敗の反省は勝手にしてくれると信じ、「ここに居ていいんだ」と。
かくれんぼの延長のような、すこしスリリングな遊びも、小さな失敗を経験できる良い方法かもしれません。勝手にどこかへ行ってしまうと、飼主が見つからなくなってしまいハラハラ・ドキドキ、という経験だ。が、実はこれは難しい技術なのだ。しばらく隠れていて、犬が心配になって飼主が早く出てしまうと、犬は「どこにいっても飼主は見ていてくれる」と勘違いしてしまう。これでは全く逆効果。人間の3歳児と同じ。そうならないように十分な時間をかけて、丁寧に接する必要があります。
「マズイ、飼主がいない!」と思わせたらしめたもの。飼主の背中を見つけたら、一目散に走ってくるだろう。このタイミングが遅いと、犬は自分で帰り道を探し出してしまう。飼主を探している絶妙なタイミングが大切。そしてこのとき飼主はひたすら堂々としていればよい。間違っても「どこ行ってたの~、心配したわぁ」などという雰囲気を醸し出してはいけない。リーダー犬は群れから去る犬を追い戻すことは決してしない。「ついてこなかったらお前はヤバいことになるぞ」というリーダーとして強い心で迎える。遠くへ行ってしまったことを叱るのではなく、自分から戻ってきたことを、静かに褒めてあげる。遠くへ行ったことは勝手に反省してくれる。
焦ってリードをつないではダメ。罰として理解される可能性があるからだ。
正しく経験できた犬は、もう遠くへは行こうとしない。